ガンダムGQuuuuuuXのイズマコロニーの生活を体験したくて、ブラウザで回る人工重力コロニーを作った
Spinward は、ガンダムGQuuuuuuXのイズマコロニーを体験したくて作りました。
直径6.4キロのスペース・コロニーは、113.5秒に1回回転し、1Gの遠心力を生み出している。私たちを地面に押し付けているこの力は本物の重力じゃない。宇宙(そら)は頭の上じゃなく、足の下にあるんだ。コロニー生まれの私たちは本当の重力も、本物の空も知らない。もちろん、本物の海も。
——『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』マチュのモノローグ より
あの回転するスペースコロニーの偽物の重力を体感したかった。そして空を見上げると、向こう側に夜景が見える——あれを自分の目で見たかった。

夜のイズマコロニー。道の先で街がそのまま立ち上がって、頭の上まで街明かりが続いていく。やりたかったのは、この一枚です。
「人工重力環境下で球技はできますか?」
気になること自体は昔からあるんだけど、最近だと2023年12月にChatGPTへ「回転による人工重力環境と地上の重力環境の違いは?」と聞いています。地球におけるコリオリ力までは理解できるんだけど、回転運動による擬似重力での投射は、頭の中でその挙動を描ききれませんでした。そのままChatGPTに「人工重力環境下で球技はできますか?」「球の挙動について詳しく」と質問を続けています。投射に限らずビルの高さや車や交通機関での移動など、地球上での暮らしとどのように制約の差異があるのか気になっていました。
前身の izuma-sim(2025年)
最初に形にしたのは2025年5月末、Claude Code の実用性がグッと上がった頃です。 izuma-sim という名前で作り、1週間で82コミット積んで止まっています。Three.js と Rapier で円筒を回し、EVAで船外に出たりコロニーの地表を歩いたり。直径は同じ6.4km。設計の核——擬似重力を計算で足すのではなく、回転する円筒との接触から力が自然に生まれるようにする——も、このとき決めていました。今の Spinward の物理はここからの持ち越しです。違いはVRがなかったこと。izuma-sim はPCのマウスとキーボードが前提でした。

2025年5月末のizuma-sim。同じ直径、同じ物理。景観は地面に緑を貼っただけ…。でも「回転する内壁に触れて初めて重力が出る」という核は、この時点で決まっていました。ただ、このときは自分とAIの力が十分ではなく、思ったようにいきませんでした。
VR機器を買ったので中に入りたくなった
2025年末に Meta Quest 3S を買い、せっかくなのでVRでコロニーの中に入りたくなりました。Three.jsかGodotか、どっちにしろWebブラウザで動かしたい。物理エンジンは素直なものを選ぶ。TypeScript + Three.js + Rapier にしました。
擬似重力は足さない、円筒を回す
肝は、擬似的な力を後から解析的に足さないことです。Rapierは素直な慣性系で回し、円筒の内壁のほうを角速度ωで実際に回しておく。立っている体には、回る床と接触しているという事実だけから遠心の「重力」が生まれる。回転座標系は、描画と入力値の変換のためだけに持つ。だから遠心力もコリオリ力も、後から足した嘘ではなく、回る世界に身を置いた結果として勝手に出てくる。投げると曲がる。ジャンプすると床が横にずれて迎えに来る。軸に近づくと無重量になる。回転に逆らって車で走ると重力が低下してグリップが弱くなる。RPMを上げ下げすれば世界が軽くも重くもなる。

投げた球の軌跡。球は慣性系ではまっすぐ飛んでいるだけ。回転する内壁に張り付いた側から見ると、コリオリでこう曲がって見える。擬似力を足したわけではありません。
なぜスペースコロニーなのか
人類文明がいつまでも地球の重力井戸の底にへばりついている。三体やプロジェクト・ヘイル・メアリーを読んでから、結構そんなことを考えています。そこにGQuuuuuuXのイズマコロニーが乗った。オニール型のスペースコロニーは、その関心がいちばん具体的に像を結ぶ場所でした。
景色だけでなく中身の供給まで気になります。コロニーの居住空間は体積のほとんどが窒素です。ではその窒素をどこから持ってくるのか。ChatGPTに何度か当てて、地球から持ってくのはコスト的に無理、月にはほとんど無い、いちばん有望なのは土星の衛星タイタンだ、というあたりに落ち着きました。タイタンの大気は窒素が主成分で、重力は地球の7分の1ほど。液化した窒素をカプセルに詰め、カタパルトで軌道へ撃ち出して地球圏へ送る——みたいな話。
景観は、手間の問題だった
景観については、VRChatに Space Colony “Island-4” という途方もないものがあります。まじで凄い。あの景観と正面から張り合おうとしても無理。だから一度は見た目を捨てて、回転居住区の「物理的に変な生活感」だけに絞ろうと考えていました。ジャンプすると床がずれて迎えに来る、あの気持ち悪さ一点で十分と。
ところが2026年6月、Claude Fable 5 に景観を任せたら、これがどんどん良くなる。手続き生成の都市が最大12,000棟、採光窓も鏡も街灯も昼夜サイクルも積み上がった。あれ、これいけんじゃね…諦めていた景観もやれるところまで来てしまった。

Fableに任せてから積み上がった昼の景観。まっすぐの道が奥でせり上がって、向こう側の市街地と農地が空の側へ回り込む。直径6.4kmだと地面の曲がり方はこのくらい。
景観は結局、アイデアではなく作り込む手間の問題でした。3月にCodexで回したプロトタイプが45コミット、6月のバーストで80コミット超。手間が軽くなると、気にするのは「作れるか」ではなく「何を作りたいか」のほうになる。
イズマコロニーで本当にやりたかったのは、空を見上げると向こう側の街が見える、夜なら街明かりが灯る、あの一枚です。半分はもう動いています。次はとりあえず、夜の街明かりの密度を上げるあたりから手をつけます。